週刊読書マラソン

積読消化をめざすささやかな悪あがきの記録

春風社編集部編『わたしの学術書』

週刊読書マラソン第3号は、春風社編集部編『わたしの学術書―博士論文書籍化をめぐって―』(春風社、2022年)です。

今のところ、特に書籍を出版する予定は自分はありませんが、研究者が自身のキャリアや著書の出版について綴る試みはあまり目にしたことがなくて新鮮で、軽い気持ちで手に取ったつもりが一気に読み終えてしまいました。

 

 

本書の構成

(58人分あってあまりにも長いので割愛。春風社Webサイトをご参照ください)

 

本書の面白かったところ、新しく学んだところ

自分と同じ学問分野の方は少なかったですが、人文社会系の研究者のキャリアと書籍出版について、それぞれの著者のテイストで描かれており、読みやすかったです。

当然ですが、研究者というキャリアを歩み始める時期もそれぞれ異なります。自分の学問分野も比較的社会人経験のある人たちは多い分野だと思うのですが、「現場」と呼べるような職歴を経て研究を始める方は他の分野でもしばしばいらっしゃるのだなと改めて認識しました。その方が問題意識を明確にして研究を始められそうですね。

また、博士論文の執筆にどのくらいかかったか、そして学位を取得してから書籍化するまでの道のりもかなりバリエーションがありました。そのバリエーションに応じて、早期に出版することを優先して多少自分の手出しが多くなることを飲み込むか、出版を急がず助成金を取ることを優先するのかもさまざまで参考になりました。そして少なくないケースで、この博士論文の出版がライフステージの変化と重なることも見てとれました。

学術出版はあまりお金になる領域ではないと思うのですが、次の世代の研究の枝葉を伸ばすことにつながるという意味では尊い営みであり、研究者・出版社双方の努力に頭が下がる思いがしました。自分もいつの日か、そうした営みに続いていけるようになりたいところです。