週刊読書マラソン

積読消化をめざすささやかな悪あがきの記録

筒井淳也『未婚と少子化』

学位論文提出のためさすがに更新できず、2週間休刊しておりました。気を取り直して週刊読書マラソン第12号は、筒井淳也『未婚と少子化―この国で子どもを産みにくい理由―』(PHP研究所、2023年)です。

 

 

筒井先生はこの分野で有名な方だということは存じ上げていましたが、これまで買ったご著書は本棚に眠ったままになっており、とりあえず最新作から読んでみることにしました(怠惰)

 

本書の構成

はじめに

第1章 少子化の何が問題か

第2章 何が出生率の低下をもたらしたのか

第3章 少子化問題自治

第4章 グローバルな問題としての少子化

第5章 少子化に関わる政策と数字の見方

おわりに

新書マップより抜粋)

 

本書の面白かったところ、新しく学んだところ

少子化についてまったくの素人なので、勉強になったところは多かったです。少子化対策子育て支援ではない、また晩婚化・未婚化の影響が大きい、あたりは聞いたことがありましたが、出生率上昇でさえも少子化対策としては優先順位が必ずしも高くない、ということは目から鱗でした。また、婚外出生率の高さもあくまで結果論というのも、それはそうだなあという感じでした。

この本の落としどころとして、少子化は複合的な現象であるうえ、その解決がすんなり進んだ国は存在しないことから、安定した雇用の供給や共働きが可能な働き方へのシフトを始めとした総合的な政策が求められる(が、政治家にとっては実績が見えづらくやりづらい)ということが述べられていました。他方で、アプローチも多様であることながら、ちょうど本書が冒頭で述べていたような「どういう国をつくりたいのか」という目標論は、確かに4〜5章でふれられていたのかなとは思いつつ、もう少しそのバリエーションが検討されてもよかったようにも思いました。例えば、イスラエルやフランスのような少子化対策は、それ相応の文脈があることがわかりましたが、日本ではどういうシナリオがありえるのだろう、というのが気になった感じです。