週刊読書マラソン第23号は、パク・キスク『図書館は生きている』(原書房、2023年)です。
前回に引き続いて図書館関係の本ですが、こちらはノウハウ本ではなくエッセイですね。エッセイを取り上げるのは初めてな気がします。
本書の面白かったところ、新しく学んだところ
前回の『調べる技術』にもつながるような、司書さんのレファレンスの話題も興味深かったですが、個人的に一番面白く読んだのは蔵書廃棄の話でした。公共図書館は国立図書館や大学図書館と役割が異なるために、新たな図書を購入するということは、利用の少ない図書を廃棄することと表裏一体ということでもあるとのこと。しかも棚をぎゅうぎゅうにすることもできず、三分の一は空けておかなければならないとなると、見た目以上にキャパシティは有限なのだなと思わされます。
特に、買う図書の選書もそうですが、どの本を捨てるのかという選書も難しいテーマだと考えました。研究に有用であるから、あるいはアーカイブとして貴重であるから、という選書基準を公共図書館が取らないとしたら、何が公正で民主的な選書基準となるのでしょうか。「市民がよく利用する/しないから」というのは市民が納税者である以上確かにひとつのロジックではありますが、それだけをもって民主的な選書とも言いがたいように思います。このテーマは自分なりにもう少し議論を追いかけてみたいなと感じました。
他にも、楽器を貸し出す図書館や、著者を始めとする図書館旅行という趣味も新鮮な話題でした。もちろん、検閲やプライバシーとの戦いであるとか、移民やホームレスといった市民の包摂など、公共図書館におなじみの政治的論点も多く含まれていて、そういった幅の広さも魅力的な一冊です。